辻飯

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ページ番号1000729  更新日 平成30年2月28日 印刷 

今は昔。毎年七月十四日になると有馬小学校の中河内地区の女の子は一年生から六年生まで朝の一校時を済ますとそろって早退した。それは世にも珍しい辻飯行事を行うためであった。
この日この地区の未婚の乙女は、かねて宿に借りておいた一農家に全員集まり、最年長の娘がリーダーシップを取ってご飯を炊きカボチャ・がんもどきなどを材料とした煮しめや各自が持ち寄ったキュウリでうりもみなどの料理を作る。
料理が終わると朴の木のある家からその葉をもらってきてそれを三等分ぐらいに切り一葉一葉にごく少量のご飯を盛りつける。それを各自が持参してきたお酒一本とともにおぜんの上にのせる。この用意が済むと女の子たちは全員手ぬぐいで結び目がぴんとはね上がるようにハチ巻きをし、赤や黄のたすきをかけ、着物のすそをはしょってみんなピンクの腰巻をあらわに出して草履ばきで、先のおぜんをめいめい捧げ持つのである。
それから年長順に行列を組んで地区の上の方から辻々を順次まわる。この奇異な行列は辻へ来ると、一人ひとり朴の葉のご飯を供え、それにお酒を二、三滴注ぎそこに葬ってある飼い鳥や犬猫の霊を慰め盆供養をするのであった。
何か所もまわるうち、おぜんは平らに捧げていなければならず苦痛を伴ったそうだが、こうして地区内をまわり終わると焼場があった丘の上の小塚へ残りものは全部捨て、悪霊に取りつかれないようにと後を振り向かないで宿まで逃げ帰るのであった。それから地区の男子青年を招き、先に作っておいた手料理を囲んで楽しいひとときを過ごした。
こうした麗しい盆行事は昭和の初めごろまで続いたが、いつの間にか廃れてしまった。このことはなぜか『神奈川県史5民俗編』にも収録されていない。おそらく全国的にも希有な風習で民俗学上、記録にとどめておくべき貴重な行事であると思われるであろうがどうだろう。

参考 海老名むかしばなし第5集「盆の楽しみ辻飯と神輿」

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