相生の榧

 時代は不明だが、植えた榧の木に、わき芽が出て二本になってしまったので、その小さい方を伐り取ったら、そこからまた新しい芽が出ていつの間にか二本同じ大きさになってしまったと言い伝えられているものである。
 推定樹齢は四百年とされ、それから考えれば、慶長年間(1596~1614)に再建されたという観音堂とほぼ同時期に植えられたものであろうというのが定説であった。
 しかし、その話は現在の榧の前身のことで、元の木は元亀元年(1570)、兵火にかかり、観音堂とともに焼けて枯れてしまったことがわかった。
 ところが枯れたこの榧を切り倒したら、何年かたってその切り口からまた新しい芽が二本出て、勢いよく育って現在に至ったものであるという。
 枯れた切り株から新芽が出たということが不思議であるということから、後に七不思議のひとつに数えられ、また、松の葉のようにいつも一対ともに育つため、霊木と言われるようになったもののようである。
 事実この木には不思議な霊力があるとされ、その形や由来から夫婦、縁組み、出産、子育てなど、男女両性と子孫繁栄に関係のある霊験伝説が数多く伝えられている。
夫婦仲のうまくいかない家庭では、子の刻(夜中の十二時)に井戸の水を汲んで、この二俣榧の間に注いで祈ると夫婦和合し、家庭が円満になるというので祈願する人も多く、また、戌の日の子の刻に汲んだ水を注いで観音様にお願いすると丈夫で賢い子が授かるというので、結婚前の若い娘さんが瓶の水を注いで祈るほほえましい姿も時々見かける。
 その霊験真偽のほどは保証できないが、この榧に祈って家出した配偶者を呼びもどす足止めの歌と秘法も伝えられており、関東大震災の前後までは家出した夫や妻の足止め祈願に、人目を避けて夜参りする人もあったという。 

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