風邪の厄払い

 昔は今よりも気候が寒かったように思われる。稲の刈り取りの時期には、現在のような暗渠排水もできていないために、薄氷の張った田で稲刈りをする年もあったようである。
 「日雇いと西の風は日一杯」といわれ、寒いカラッ風も刈った稲束を乾かしてくれる風と、むしろありがたがられた。また、家の中をすき間風が吹いて風邪を病む者も多く、年に一度各家をまわって置いて行く越中富山の薬屋の風邪薬もいつの間にか空になり、おとなは卵酒とネギ湯、子供はくず湯、そして綿を真綿でくるんだ首輪でのどを暖めセキを防いだ。
 風邪は一人がかかると、家中に伝染するので、いつの時代からか風邪の厄払いが行われていた。寒さのために風邪が流行して家の中でだれかが風邪にかかると、まず茶わんに梅干しを入れて熱湯を注ぎ、家中でその湯気をかぐ。
 次に半紙の上にその梅干しを付け木(ひのきなどのうすい木片の一端に硫黄を塗りつけた、たきつけ用に使うもの)にのせおさい銭として一銭を供えて村の道の辻に納めてかけ足で帰る。途中振り向くと風邪の神が追いかけて来てまた家に風邪を持ち帰るといわれた。
 風邪の神を納めたその道を一番最初に通った人に風邪の神はついて行くといわれ、また、おさい銭を盗むと風邪がうつるとされ、おさい銭を拾って来ることを戒められた。
 寒い木枯らしが吹く師走の村の道辻に梅干しとおさい銭が雨に打たれ、とけかけた半紙の上に置いてあったのも遠い昔の思い出となった。

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