乳房の公孫樹

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ページ番号1000727  更新日 平成30年2月28日 印刷 

下大谷の観音様には、大きな公孫樹が街道ふちにあって、幹から瘤が二つ乳房のように垂れ下がり、その先から滴る雫を飲むと、母乳がよく出るようになるというので、「乳房いちょう」「子育ていちょう」などと呼んで七不思議の一つとされていた。地元よりも、むしろ遠く離れた土地の人の方がこれをよく知っており、母乳の足りない母親がワラジばきで、はるばるこの水をもらいに来た。事実この水を飲むと翌日は乳がほとばしるほど出たという。
また、この公孫樹は、一本の花梗の先にギンナンが二つ並んでつくので、「くっつきギンナン」とも「夫婦ギンナン」とも言われて、これも七不思議の一つであった。
安産・子育ての観音様にふさわしいこの霊木を、お堂修理の費用捻出のために伐ろうという話が持ち上がったのは、大正に入るとすぐだった。「霊木を伐らなくても」という意見も多かったが、地元の某が先に立って伐ることを主張し、地区ごとに発言力の強い顔利きを説得して、根まわしをしておいて集会に臨んだため、反対意見はつぶされ、とうとう大正二年(1913)にこの公孫樹は伐り倒されてしまった。それは張り板、裁ち板、まな板などに挽いて売却したので、現在でも地元には何枚かが残っているはずである。
この木は一本で二つの不思議を持っていたわけであるが、心ない人たちによって現実の不思議が二つ姿を消してしまったことは、かえすがえすも残念なことである。
公孫樹を伐り倒すことを主張した人たちは、その後、跡継ぎに恵まれず血統の絶えた家が多いが、子育ての霊木を伐り倒し、子孫繁栄の根本を絶った祟りであろうとは、ある古老の因縁話である。
現在、石段下の右側にある公孫樹は、その後、植えられたもので、樹齢はせいぜい七、八十年であろう。

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